リヒテルの楽器

20世紀を代表する名ピアニスト、スヴャトスラフ・リヒテルは、ピアニストとしての生涯のうち半分ほど、日本製のヤマハピアノを愛用し続けました。
1969年、クリストフォリがピアノの原型を発明したパドヴァにて、リヒテルはヤマハピアノと出会いました。南フランスのマントン音楽祭では、ピアノを少し弾き比べてみただけで、ヤマハピアノの素晴らしさに心を奪われます。リヒテルを虜にしたのは、ピアノの質自体が素晴らしいことはもちろん、職人の優れた感覚と、きめ細やかで正確な技術力も荷担していました。

翌年の大阪万博で初来日、演奏したリヒテルは、2日目からの全てのステージでヤマハピアノを用いたことが話題になりました。世界的なピアニストともなると、海外のピアノメーカーを使用するのが当たり前だった中、日本製のピアノを弾くリヒテルは、日本人にも海外の人達にも衝撃を与えたのです。
その後の活動では、来日公演のみならず、リヒテル主催のツール音楽祭、ヨーロッパ・ツアーなど全ての公演において、ヤマハのピアノを積極的に用いるようになりました。
「本当に良いピアノとは、心の感度、音楽に反応する感度が優れている。言い換えるなら哀しい音を出したいときは哀しく、嬉しい音を出すときには嬉しく鳴ってくれなければいけない。ヤマハは、そうした心の感度の良さとブリリアントな面の両方を持っている。」と、リヒテルはヤマハピアノについて語っています。